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『音の大きさ』とは人間の聴覚が感じる音の強さであり感覚量(心理量)のひとつです。ふつう、純音であれば音波の物理的音圧が増大するほど音は大きいと感じます。複合音の場合、音波の運動エネルギーが増えるほど音は大きく感じられる傾向にありますが、物理的な音圧と心理的な音圧が等しくないため、単純に同じように大きくなるとは限りません。
※30デシベルの音を40デシベルにすると、物理的音圧は10倍になりますが、知覚的には10倍大きい音と評価されるとは限りません。音は大気圧の微少な圧力変動であり、この圧力変動を音圧(おんあつ)と言います。単位はパスカル(Pa)で表します。
音声(おんせい)とは人の声、すなわち人が発声器官を通じて発する音です。 基本要素として母音と子音があり、さらに、これらを細かく分類して、特定の言語で意味の違いを弁別・認識する音声の基本単位を音素といい、特定の言語に依存せずに、音声学で分類・定義する音声の基本単位を単音といいます。
外耳(がいじ)とは、耳の構造のうち耳介(耳殻)と外耳道を合わせた部分をいいます。
外耳道(がいじどう)は、いわゆる耳の穴のことで、骨部と軟骨部に分かれています。骨部は毛が生えておらず、軟骨部は毛が生えていて皮脂腺などもあります。感覚神経は外側が三叉神経支配であり顔面の知覚と同じですが、内側は迷走神経支配で咽頭の知覚神経と同じです。
蝸牛(かぎゅう、cochlea)とは、内耳にあり聴覚を司る感覚器官・蝸牛管(cochlear duct)が納まっている、側頭骨の空洞です。蝸牛管を指して「蝸牛」と言うこともあります。蝸牛管は中学・高校の生物ではうずまき管と呼ばれています。
哺乳類では動物のカタツムリに似た巻貝状の形態をしているためこれらの名がつけられました。
蝸牛管の内部は、リンパ液で満たされています。鼓膜そして耳小骨を経た振動はこのリンパを介して蝸牛管内部にある基底膜 (basilar membrane) に伝わり、最終的に蝸牛神経を通じて中枢神経に情報を送ります。
解剖学的な知見に基づいた蝸牛の仕組みについての説明は19世紀から行われてきましたが、蝸牛が硬い殻に覆われているため実験的な検証は困難でした。1980年代ごろよりようやく生体外での実験が本格化したものの、その詳細な機構や機能については依然謎に包まれた部分があります。
蝸牛神経(かぎゅうしんけい)は、12対ある脳神経の1つである内耳神経を構成する神経です。
前庭から起こる前庭神経と合流して、延髄から橋にかけて広がる前庭神経核と蝸牛神経核を通り、前庭覚(平衡覚)と聴覚を伝えています。
橋(きょう、[拉]pons) は、脳の部位の一つで脳幹に含まれ、前後を中脳と延髄とに挟まれています。
第四脳室の腹側壁をなし、第四脳室をはさんで背側には小脳があります。
多くの脳神経核が存在し、三叉神経、外転神経、顔面神経、聴神経といった脳神経が出ている部位です。
骨伝導(こつでんどう)は、空気を伝って鼓膜(中耳)を振動させ聴覚神経(内耳)に伝わる(気導音)に対して、声帯などの振動が頭蓋骨を伝わり直接聴覚神経に伝わる(骨導音)ものです。この骨伝導は意図的に起こさなくても日常で常に起こっていて、例えば自分が聞く自分の声は気導音と骨導音が合わさったものだったりします。
録音した自分の声を初めて聞くと強い違和感を覚えるのは、録音機器のマイクは空気伝導によって伝わる音のみを録音するため、気導音と骨伝導で聞く自分の声と違いを感じるからです。
鼓膜(こまく)は中耳と外耳の境目にある、直径8 - 9mm、厚さ0.1mmの膜で、耳小骨に音を伝える部位です。
外耳側から順に、皮膚層、固有層、粘膜層の3層からできています。
三半規管(さんはんきかん)は平衡感覚(回転加速度)を司る器官で、内耳の前庭につながっている、半円形をしたチューブ状の3つの半規管の総称です。名前はその形状と数に由来しています。
ヒトを含む脊索動物のほとんどが半規管を3つ持っているため三半規管と呼ばれますが、無顎類では半規管が2つ(ヤツメウナギ類)ないし1つ(ヌタウナギ類)ですので、「三半規管」という呼称は器官の代表的な名称としてはふさわしいものではないかもしれません。
耳小骨(じしょうこつ、Ossicles)とは、陸上脊椎動物(四足動物)の中耳内に存在する微小な骨で、外部から音として鼓膜に伝わった振動を内耳に伝える働きをします。
ほとんどの四足動物では中耳内の小骨は鐙骨のみで構成されますが、哺乳類では鐙骨(あぶみこつ)・砧骨(きぬたこつ)・槌骨(つちこつ)の3個になり、この順に内耳から鼓膜へ繋がっています。
ただ単に耳小骨といえばこの哺乳類の3個の骨を指すことが多いのですが、広義には他の四足動物の中耳内小骨(鐙骨または耳小柱)も指す場合があります。
前庭(ぜんてい、英語: vestibule、ドイツ語: Vorhof、ラテン語: vestibulum)は、内耳にあり重力と直線加速度を司る感覚器官です。
前下内側は蝸牛と、後上外側は三半規管と接する内耳の中央部にある器官です。三半規管同様、内部はリンパ液で満たされており、三半規管や蝸牛に通じています。
内壁には卵形嚢と球形嚢という2つの耳石器が、中耳側には前庭窓と蝸牛窓があります。
耳石器は、哺乳類は卵形嚢と球形嚢の2つだけですが、魚類、両生類、爬虫類、鳥類は更に3つめの耳石器として壷嚢を持っています。これらの耳石器の内部には炭酸カルシウムでできた平衡砂(耳石)があって、感覚細胞に繋がっています。これが重力や直線加速度によって傾くことで前庭神経から脳に刺激が送られます。
中耳(ちゅうじ、英語:middle ear)とは、耳の鼓膜から奥のことをいい、中耳腔、耳小骨、耳管から構成されています。
鼓膜から内耳(三半規管、蝸牛、前庭)へ空気の振動(音など)を伝えるはたらきをしています。
中耳の中は絶えず酸素が消費されており、それに伴い外耳道より一時的に圧が低くなる事はありますが、酸素が消費されるだけ消費されたところで圧が調整された後であれば酸素の消費が圧の違いに及ぼす影響は、気温・体温・大気圧の変化に比べれば考慮する必要がないほどわずかです。
飛行機に乗ったりして周囲の気圧が急激に減少すると、耳にポーンと張ったような違和感を覚えることがあります。
これは、外耳側は外気圧をそのまま受けるのに対して、中耳側の圧力はすぐには変化せず、鼓膜の両側に圧力差が生じるからです。このような時は、唾を飲み込むと直ります。唾を飲み込むことで口蓋帆張筋がはたらいて耳管が開き、中耳の圧力と外気圧との均衡が回復します。
外気圧が低い場合はこの調整は容易ですが、逆の場合は鼻をつまむなどして鼻孔をふさいだ上で、鼻から息を吐き、呼気を耳管を通じて中耳に送り込むことで内外の圧力を調整する必要があります。耳抜きといい、ダイバーの常識となっています。
聴力(ちょうりょく)とは、音を識別できる能力のことです。
空気から鼓膜を振動させた場合の聴力を気導聴力、頭蓋骨を振動させた場合の聴力を骨導聴力と呼びます。
両者の差から難聴の原因を探ったりします。
聴力を測るには、どのぐらい小さな音まで聞こえるかということを測定します。測定する方法によって、色々種類があるのですが、聴力検査の中で最も基本的かつ重要な検査は、「標準純音聴力測定」というものです。
他には語音聴力検査といって言葉の聞き取りの能力を調べるものや、脳波を使った聴力検査などがありますが、単に「聴力測定」という場合には、この標準純音聴力測定を指します。
内耳(ないじ、英語: inner ear、ドイツ語: inneres Ohr、ラテン語: auris interna)は、耳を外耳、中耳、内耳と3つに分けたときに最も内側にあたる部分です。蝸牛と前庭・三半規管より構成されます。リンパ液を膜で包んだものが入り組んだ形をしていて膜迷路とも呼ばれます。これを包む骨を骨迷路といいます。
聴覚にかかわるのは蝸牛であり、ここに音の振動を神経(蝸牛神経)に伝えるための構造があります。外耳、中耳はここへ振動を伝えるための構造に過ぎません。
内耳神経(ないじしんけい、vestibulocochlear nerve)は、12対ある脳神経の一つで、第VIII脳神経、前庭蝸牛神経、聴神経(auditory nerve)とも呼ばれています。前庭から起こる前庭神経と蝸牛から起こる蝸牛神経が合流したもので、延髄から橋にかけて広がる前庭神経核と蝸牛神経核を通り、前庭覚(平衡覚)と聴覚を伝えます。
難聴(なんちょう、英語: hearing impairment)とは、聴覚が低下した状態のことです。耳科学的には、聴覚の諸機能の感度や精度が若年健聴者、即ち、耳科学的に正常な18歳から30歳までの多数の評定者の聴覚閾(域)値の最頻値(0dB HL)よりも劣っている事とされ、そのレベルは30dB HLとされています。
■平均聴力レベルとコミュニケーション障害の関係
難聴は、障害の原因、部位によって、伝音性難聴・感音性難聴に大きく2分されます。混合性難聴はこれらを共に持っているものであり独立させて扱う場合もあります。
伝音性難聴は、人の耳に外界から空気の振動である可聴音( 20 Hz ~ 20,000 Hz と言われている)が外耳と中耳を通して内耳へ伝えられるはずが、外耳・中耳・蝸牛窓・前庭窓のいずれか、又はそのすべてがおかされ、伝送特性が変化するために起こる聴覚障害をいます。
感音性難聴は、外耳や頭蓋骨から入力された音のエネルギーが内耳リンパ液の振動に変換されてはいるものの、内耳又は内耳から聴覚中枢に至る部位に器質性の病変があると考えられる聴覚障害です。
この他に、聴覚に関わる部分に全く器質的な障害がみられない難聴を機能性難聴と呼びます。
平衡感覚(へいこうかんかく、英:sense of equilibrium、独:Gleichgewichtssinn)は、生体が運動している時や重力に対して傾いた状態にある時にこれを察知する働きで、平衡知覚とも呼ばれています。
体がどちらを向いているか、どれくらい傾いているか、動いているかどうかといった情報は運動能力のある生物においては重要です。このような情報を受け取るのが平衡感覚で、一般的に、これは体に働く加速度を受け取る形で得られ、それを受容する装置は一般に平衡胞といわれます。人間の場合、内耳がその役割を持っています。
耳垢(みみあか・じこう)とは耳のなかの垢です。俗に耳糞(耳屎、みみくそ)とも言われています。空気中のほこり、皮膚の残骸などと、外耳道の耳垢腺というところから出る分泌物が混ざり合ったものです。
除去する必要があるとする意見としなくて良いという意見の双方があるとされていますが、その理由は下記の耳垢の性質によるものと考えられています。
耳垢は乾性耳垢(乾燥した耳垢、「こな耳」)と湿性耳垢(湿った耳垢、「べた耳」)があることが知られています。 この性質はメンデルの法則に従って遺伝することが知られていて、湿った耳垢は優性、乾いた耳垢は劣性です。
日本に於いては優性遺伝である湿性耳垢が少数派となっています。
石井正則(東京厚生年金病院耳鼻咽喉科部長)氏は、「耳垢は弱酸性であり、殺菌剤としての役割を果す」と述べ、「耳垢にはこのような特長が備わっているため、外耳道を清潔にするために行ったはずの耳掃除が菌や虫の生息に適した環境作りとなる可能性がある。生活環境等にもよるが、耳掃除の頻度に留意する必要がある」と2009年9月の東京新聞に記しています。耳掃除も必要以上にしすぎてしまうことは避けた方が良いようです。
耳たぶ(英語: earlobe, フランス語: lobe d'oreille, ドイツ語: Ohrmuschel)は、外耳の構成要素で耳殻の下部に垂れ下がった柔らかい肉のことで、耳朶(じだ)、耳垂(じすい)、耳たぼ(みみたぼ)とも言われています。
人間の耳たぶの付き方の類型には、頭部から離れて垂れ下がる形となる分離型と、頭部となだらかにつながった輪郭を描く密着型とがあります。
耳たぶの形状はメンデルの優性の法則に従い、遺伝によって決定されます。分離型は優性、密着型は劣性の対立遺伝子による形質で、分離型と密着型両方の遺伝子をもつ場合は分離型になります。
東洋では、分離型で特に分厚く肉付きが良いものを「福耳」と呼び、運があるとされています。
耳鳴り(みみなり)とは、実際には音がしていないのにも拘らず、何かが聞こえるように感じる現象のことで、耳鳴(じめい)と呼ばれることもあります。
耳鳴は、難聴とともに出現することが多いとされており、この病態は、軽い不快感から不眠、ときにうつ状態など大小のストレスを引き起こしうるものです。耳鳴りは本人にしか聞こえない自覚的耳鳴と、外部から聴取可能な他覚的耳鳴(大小の筋肉の痙攣や、血管病変の拍動など)に分類されます。急に生じた耳鳴が急性感音難聴の唯一の自覚症状であることもあり、早めに一度は耳鼻咽喉科受診をするべきであると考えられています。また、頻度は少ないものの、脈拍と同調する耳鳴の一部に腫瘍や血管病変に起因するものがあり、注意が必要です。
完全な無音状態で、「シーン」という耳鳴りが聞こえることがありますが、この耳鳴りは健常な反応であって、病気などではありません。
聾者(ろうしゃ)とは、聴覚障害者の一区分で、聾唖者(ろうあしゃ)という場合もあります。医学的な基準では、両耳の聴力が100dB以上の最重度聴覚障害のことを「ろう」といいます。 聾唖(ろうあ)の「唖(あ)」は、しゃべれない事を意味する語です。昔は、音声言語を獲得することが不可能だったため、「耳が聞こえない」ならば「しゃべれない」という命題が成り立っていました。しかし、現在は、口話法・高性能の補聴器・早期訓練などによって、ある程度はしゃべれるようになったり、音声言語ではなく手話で意思疎通がはかれる、などの理由から、『ろう』という言い方が一般的になっています。
老人性難聴(ろうじんせいなんちょう)とは、加齢が原因の聴覚障害のことで、感音性難聴が多いとされています。 一般的には「耳が遠い」という言い方をします。 聴覚に関わる細胞の減少・老化により、聴力が低下するもので、通常は、50歳を超えると聴力が急激に低下し、60歳以上になると会話の面で不便になり始めます。 進行状況は個人差が大きく、40代で補聴器が必要になる人もいれば、80代を超えてもほとんど聴力が低下しない人もいます。 老人性難聴は、低音域ではあまり聴力の低下はないようですが、高音域においての聴力低下が非常に顕著で、そのため子音を含む言葉(特に「か」行や「さ」行が正しく聞き取れない事が多い)が聞き取りにくくなります。 特に女性の声ではそれが顕著なようです。 聴力の低下があまりみられない音域の物音(ドアの開く音とか車のエンジンの音、足音など)に非常に鋭敏になるという特性もあります。
耳や補聴器についての代表的な疑問・質問をQ&A形式でまとめています。 気になるジャンルをお選びになってご確認ください。
※補聴器などを利用せず自然なきこえ方を『聞こえ』、補聴器などによって補正されたきこえ方を『聴こえ』と区別して表記しています。